ANALOG 2
電力メーター 2009.5.14
犬の散歩にまたカメラを持ち出した。毎日歩いている道だから、もうなにも撮るものはないかな、と思っていたのだが、あったあった。傾いた木の電柱に取り付けられた『電力メーター』。ちょうど電線は空中から地中に向かっている。この裏通りは古い電送のまま取り残されたかのよう。それをこのなんともアナログな電力計がさらに際立たせている。
それにしても美しい。なんだか心が躍ってしまう。ガラスにつつまれたフォルムはデザイン的にすばらしいし、あえて中の構造を見せているのが機械式腕時計の背面を感じさせる。
やっぱりアナログっていいよな~と、ふと思った。デジタル製品にはない温もりが宿っている。
オーディオでいえば、CDとレコード盤。CDはそのサンプリングレートの低さから音質に問題ありとされ、最近はSACDなどの高密度なデジタルメディアがある。だがそれでも、レコード盤と聴き比べると瞬時に違いがわかる。アナログのほうが奥行きや余韻がなんとも色っぽい。もとの音源を正確に記録しているという意味ではデジタルのほうが優れていると思う。だが、この艶の差はなんなのだろう。もしかして、レコード盤そのもののアナログの性質が音にのっているのかもしれない。だから、きっとそれはスタジオの音+盤を針でなぞることで生まれる独特の空気感の複合物なのだ。
アナログはやっぱり素晴らしい。でも、デジタルにも『命』は宿ると信じている。製作中のゲームのビルド(実行可能なかたちにすべてのプログラムとデータをリンクしたもの)をハードディスクなどに入れて持ち歩いている時に感じるのだ。エレベータの中とかで、ふと、手に持ったハードディスクが生きているような感覚に襲われる。無から自分たちが生み出したものなのだが、複雑化し、多くの人の手にかかり、熟成されることで、まるで赤ん坊のように独自の命を持ち出し、手のひらの中でうごめきだす。これはなんとも不思議。でもそうやって、最初はデータの固まりにしかすぎなかったものが、ひとり歩きしだすのはとても嬉しい。「つくってよかった」と思う瞬間だ。
そういえば、このまえ娘から、「たまたま時計をみたら『11:11』という時は、なにか願い事をすれば叶う」というのを教えられた。これもデジタルの産物かな。アナログ時計ではまず正確に分単位で合っていることはないし、そのとき娘が見せてくれたのは、自動補正されている携帯電話の表示だった。
いっけん、無味乾燥なデジタルの世界。でも、そこに命を宿せるのが人間かもしれない。

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